クラナン、快楽、そして恥辱に満ちた暴露
考えた。
なぜyuuはクラブに行くのか。
理由は
2つある。
1つ。楽しいから。
ゲーム性があるのだ。
それは、RPGのような。
まず手持ちの装備がある。
自分が身につけたオープナー、ルーティーン、ネグのことだ。
これらの「テクノロジー」―PUAのバイブルである『ザ・ゲーム』では、ナンパで使う会話の中、「テクノロジーが9割を占める」と言ってのけた人物がいた―を駆使して、女性にアプローチし、和み、ゴールを目指す。
yuuのテクノロジーが通用する女性もいる。
この時に感じる達成感とその後に控えている性的快楽は、楽しみの1つだ。
ただ、これ以上に楽しい瞬間がある。
自分のスキルセットが、まったく通用しない時だ。
なぜ通用しなかったのか、自省し、仲間と真剣に議論を交わす。
バイブルの教えが、腑に落ちる。
その議論を踏まえて、テクノロジーの出し方を変えてみたり、アレンジを加えたりする。
新たなテクノロジーのアイディアが生まれることもある。
そのテクノロジーを次の実践で試し、成果を見る。
うまくいけば自分の装備に加え、上手くいなかければ修正、改善し、次の実践につなげる。
こうしてPDCAを回転させることは、麻薬的な中毒性を帯びている。
以上が、yuuがクラブに楽しみをおぼえる1つ目の理由である。
2つ目の理由は。
yuuの自尊と屈辱と嫉妬が、駆り立てるからである。
yuuは、自尊に満ちていた。
だが、空虚が、不意にこの自尊に取って代わった。
かのじょが他の男と寝たからだ。
クラブで声をかけられた男に、君はついていったのだった。
信じられなかった。
yuuは、一切浮気はしていなかった。
俺の自尊は、イマジナリーな領域に住んでいただけだった。
裏切られたという事実が暴露してくれた。
この暴露は、俺に焼きただれる程のスティグマを押し付けた。
このスティグマは、日を追うごとに強まっている。
この事実を認めたくない
未だにクラブで即を達成できないという事実―いや、1即あった―を目の前にしても、認められないでいる。
この先また即を達成したからといって、このスティグマは癒えないだろう。
即の蓄積とスティグマの治癒、両者の間に論理的な連関はない。
yuuは、それを分かっている。
だが、じっとしていられない。
何かが俺を駆るのだ。
20世紀で最も偉大なアメリカの哲学者であるJ. ロールズの言葉を借りれば、自尊心は、われわれにとって最も重要な基本財primary goodsである。
自尊心を奪われた人は、破壊的な衝動に駆られる
yuuはその衝動の餌食だ。
クラブに行くと、破壊されている自分を自覚する。
肉体的に消耗するだけではない。
ゲームの一貫として女性を消費することを愉しむyuuの人格は破綻しているだろう。
yuuは、正常にもメタな視点からこの事実を認識している。
しかし、何のブレーキにもならない。
むしろ、よりはっきりと認識すればする程、裏切りの光景は鮮明さを増し、スティグマは漸進的により深く、より醜く刻印され、そしてyuuは自ら軛を締める。
hello,
いま君に素晴らしい世界が見えますか?