vanityの壁 121215
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23時。六本木でレビトロと待ち合わせ。
今日のフィールドはvanityだ。
「今六本木で一番熱いクラブは?そう聞かれたら俺は迷わず即答する。vanityだ。」
ある人はこう言っていた。
何よりも、女性のスペックが高いらしい。
yuuとレビトロは、期待に胸を高鳴らせていた。
並びながら戦略を確認。
目標は、5バンゲ。高スペックな準即案件を確保する。
フィールドが変わったからといって、特別なことはしない。
いつも通りだ。
いつも通りにやれば、俺達ならいける。
そう信じていた。
1時間ほど並び、体が冷えきったところで入場。
vanityの熱は、2人を完全に怖気づかせた。
音楽の音が大きく、声が通らない。
camelot程の爆音ではない。
しかし、museのエントランスフロアに慣れきった2人にとって、vanityの音量は飛行機のジェットエンジンさながらだった。
「大丈夫だ。いつもどおりにいくぞ。」
1組目に声掛け。いつものオープナー。
「え?聞こえない。」
コミュニケーションが成立しない。
なんとか声を届けようと、つい姿勢が前のめりになってしまう。
失敗だ。yuuのような高身長が前のめりになると、相手に余計な威圧感を与えてしまう。
オープンしきる前に離脱した。
俺たちは、常にターゲットから距離をとって話していた。
ターゲットに対して直面せず、体の側面を向ける。
最初から直面すると、こちらの興味が相手の無意識に余計に感知されてしまうか、
人によってはこちらの価値を下げることになる。
相手がこちらに興味を示さないかぎり、相手に興味をもっていることを示さない。
だから、相手が身を乗り出してきたり、IOIがあってはじめて、相手に直面するようにしている。
vanityでは、そのこの戦術が通用しなかった。
まず、声を通さないことには何も始まらない。
2人は悩んだ。周りを観察した。
うまくいっている奴は、強引にノリで絡んでいるか、ドリンク・フックを使っている。
両方とも、yuuとレビトロのスキルセットには入っていなかった。
強引なナンパはやらない。好きではないから。
ドリンク・フックはやらない。ドリンクを口実にオープンしても、こちらのスキルが上がらないし、面白くないからだ。というのは表の理由で、俺たちに金はないから、というのが本当の理由だという説もある。
「あくまでもいつもどおりだ。でも1つ変えよう。声量だ。」
レビトロと会話しながら、通じる声量を確認する。
と同時に、ターゲットを探す。
いた。
8&7。museではありえない高スペのセットだ。
男が張り付いているが、あの距離感はフックできていない。
剥がれるまでに時間はかからない。
音楽を愉しむフリをしながら、様子を伺った。
剥がれた。
「ここだ。」
お互いの背中をたたき、3秒ルールで声掛け。
オープナーは通らなかった。
なんとか、会話をつなげ、1対1に持ち込む。
俺は8を担当。
札幌から東京に来たかのじょは、芸能事務所に所属し、グラビアをやっているという。
「すごいね!どおりでかわいいわけだ。」
失敗した。こんな言葉、彼女は聞き飽きているだろう。
絶対に褒めてはいけない。
頭ではわかっていた。が、高スペ相手にyuuはビビっていた。本心が口をついて出てしまった。
相手の興味が覚めるのがわかった。
なんとかネグろうとするが、頭が回らない。完全に飲まれていた。
相変わらず声が通らず、会話も盛り上がらない。
レビトロも同じだった。
ナンバークローズもせずに放流。
悔しかった。
yuuは虚栄心と虚勢の塊だった。
「とことん悔しい思いをしよう。問題点を特定して、次に活かすんだ。」
yuu達は早々とvanityから逃れた。
作戦会議。
問題を発見し、その問題を解消する仮説を構築し、そして検証することは、yuuとレビトロの得意技だった。
今回の問題は2つ。
ひとつ。声量が足りない。
ふたつ。高スペを相手にした経験がたりない。(だから自信がもてず、いつもどおりに振る舞えない。)
ふたつめの問題は、場数が自然と解消するであろう。
さらに、お互いトレーニングをして声量の問題を解消するのだ。
この解決策が依拠している仮説は、「俺たちのルーティーンは、声が通ったならば、高スペ相手にも通用する。」というものである。
この仮説を検証すべく、yuuとレビトロはmuseに向かった。
museでは声が通る。いつもの空間で、自信も持てる。
つまり、上述の2つの問題点を解消した俺たちを、時間を先取りして演じることができる。
museは仮説検証の場として最適だった。
museには、1人か2人しかいないであろう、8~9の高スペにアプローチし、仮説を検証する。
まさかの入場規制。3時までは入れないという。
が、いつものセキュリティの方の好意で、思いのほか早く入場できた。
ありがとうございます。
入場規制がかかっていることから、人が多いことは容易に想像できた。
とりあえずフィールド分析。
男女比は男:女=7:3
状況はそれほど悪くない。
女性のスペックは、いつも通り。5~6がボリュームゾーン。
8~9は見つからなかった。
どこかにいる。そう信じて、いつものエントランスフロアにポジショニング。
1バンゲ。
と、ここで先日準即した28才ITガールに遭遇!
「何やってるの?」
動揺するyuu。明日は仕事だからと嘘をついて、アポを断っていた。
「そっちこそ?いい男は見つかった?」
余裕を装う。
「後で一緒に踊ろう。」
そう言って離脱。
心苦しさをおぼえる。
「そんなこともある。かのじょも気にしてないさ。」
レビトロの励ましが響いた。
目標を思い出し、ターゲットを待つ。
必ず現れる。
いた。
ソファーの隅っこで、女性2人で携帯をいじりながら疲れた顔をしている。
8&5のペアだ。
あの8を狙うことに決めた。
何組かが既にアプローチしているのは確認した。どこも早めに離脱していた。
かなり堅そうだ。
こういう女性にこそ、いつものオープナーが活きる。
オープン。
成功。
ただ、前のめりになりすぎた。
近いと言われてしまう。
高スペ相手だと、どうしても興味関心を隠しきれないスケベyuu。
いつもの心理ゲームルーティーン。
盛り上がったが、ほころびが生じた。
レビトロとyuuは、真横で全く同じルーティーンを駆使していた。
「まったく同じ事言ってない?」
つっこまれる。ハイタッチでなんとかごまかす。誤魔化せたのか。分からない。
初歩的なミスだった。
気負いすぎていた。
会話は盛り上がったが、ナンバークローズはできず。フェイズ・シフトの勇気をもてなかった。かのじょたちから断られるのが嫌だった。
離脱後、1バンゲ。
いつもなら六本木ラーメンで反省会だが、今日の俺たちは吉野家で惨めさを味わった。
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成果
2バンゲ
学び
・女性のもつ外見についての相対的尺度は恐ろしく感度が高い。museとvanityでは、そこにいる女性のスペックが明らかに違っていた。
・結果を気にしてはだめだ。拒絶も次に活きるフィードバックとして、最終的な結果が出るところまではやらなければ。
・何よりも、かわいい女性に囲まれるのは怖い。